*…桜夢幻…*

――その子は、いつも鏡子ちゃんと遊んでいました。
鏡子ちゃんのことが、だいすきでした…――

桜夢幻さくらむげん

ちいさなお部屋の中に、可愛いドールハウスがあった。
ドールハウスの中には、小さな小さなクローゼットに、ソファーとベッド。
そのドールハウスの住人は、髪の長い女の子。ゆるくウエーブのかかった薄茶色の髪は、いつも大きなリボンで華やかだった。
「チェリーちゃん、今日は水色のおリボンにしましょうね」
小さな女の子が、そのドールハウスの住人、チェリーにそう話し掛けながら、水色のふわふわなリボンをつけた。チェリーの持ち主は、5歳の女の子、鏡子。チェリーは鏡子が大好きだった。鏡子がチェリーをとても大切に思っているように。
「お洋服、今日はどれがいいかなぁ。あっ、この白いのがいいよね」
鏡子は嬉しそうに、ドールハウスのクローゼットの中から真っ白なフレアーワンピースを取り出し、チェリーに着せてくれた。
「鏡子ちゃーん。ピクニックに行きますよー!!」
お部屋の外から、ママが呼んだ。今日、鏡子は家族で野原にピクニックに行く予定だったのだ。
「はーい。…ねえ、ママ。チェリーちゃんも連れてっちゃだめ?」
「チェリーちゃんは置いていきましょうね。汚れちゃうといけないから」
ママは優しく言って聞かせた。大切なチェリーちゃんが汚れてしまうと大変だ。鏡子はチェリーに言った。
「ごめんね、チェリーちゃん。早く帰ってくるからね。お花もいっぱい摘んできて、見せてあげる。待っててね」
『ありがとう、鏡子ちゃん。いつも私と遊んでくれて。私、鏡子ちゃんだいすき。だいすきだよ。 待ってるからね』
チェリーは鏡子に言った。聞こえないことは判っている。だけど、お礼が言いたかった。
鏡子たちが出かけてしまうと、家の中はしーんと静まり返った。
『あーあ。私もお外に出てみたい。鏡子ちゃんと一緒に、野原を駆けまわってみたい。でも、それはできないことなんだ。だって、私は人形だから』
鏡子ちゃんが帰ってきたら、またたくさん遊べるようにお昼寝をしよう。チェリーはそう思ってベッドに入った。

『私も、お外で鏡子ちゃんと一緒に駆けまわってみたい………』

目が覚めると、知らない場所にいた。
ここは、どこかしら。
取り敢えず立ち上がり、歩き始める。向こうに女の子がいる。行ってみよう。
「あの、こんにちは」
麦藁帽子をかぶって、一生懸命にたくさんのお花を摘んでいるその女の子に声をかける。
女の子が顔を上げた。その顔を見た途端、はっとする。
『鏡子ちゃん………』
「こんにちは。…あなたはだぁれ?」
鏡子に言われて初めて気が付いた。チェリーは鏡子ちゃんと同じ大きさになっていた。
「…わたしは…わたしは、サクラ」
「そう、サクラちゃんていうんだ。じゃあ一緒にあそぼうよ」
「…うん」
それから2人は、いろいろなことをして遊んだ。花束をつくったり、摘んだ花でかんむりをつくって被せ合いっこしたり、そして、野原で追いかけっこをしたり。
白いワンピースが少し汚れてしまった。でも、とても楽しかった。とても、とても。
リボンがほどけてしまうと、鏡子がなおしてくれた。
「あのね、サクラちゃん。サクラちゃんって、私のもう1人のお友達に似てるよ」
鏡子が言った。そして2人は笑った。
永遠に、ずっとこの時が続いてくれればいい。サクラは、チェリーは、そう思った。
だけど、鏡子が家に帰る時間がやってきた。
「また会える?」
鏡子が訊いてきた。わからない。だけど、会いたい。きっと。
「会えるよ」
だから、こう答えた。そして『またね』と手を振り合った。さいごに鏡子は、ピンクの花でつくったかんむりを被せてくれた。

「ただいまー!」
鏡子が帰ってきた気配で、チェリーは目を覚ました。
とてもいい夢をみていた、と思った。もちろん現実であればもっと嬉しかった。だけど、白いワンピースはどこも汚れていなかったし、花束も持っていなかった。
「チェリーちゃん、ただいま!これ、おみやげだよ! …あれ?そのかんむり……」
花束を差し出した鏡子が、不思議そうにチェリーの頭を見た。そして笑顔になった。

「あのね、今日、お友達ができたの。チェリーちゃんにそっくりだったよ。花束をつくったり、かんむりをつくったり、追いかけっこもしたの。すっごくたのしかったんだ」
チェリーの頭を撫でながら、鏡子は楽しそうに話す。
チェリーのその、水色でふわふわなリボンがかかった頭に、小さなピンク色の花かんむりが被されていた。

もしも夢でもいいの
それが想い出となったから。
私はずっと忘れないよ。
ありがとう、鏡子ちゃん。

END
こ……こんな感じでいいでしょうか………
一歩間違えばホラーですね(爆)
何か有り勝ちな展開ですみません…
でっ…では、逃げます!!!(逃)

☆☆☆☆☆☆
きゃ〜ありがとうございます〜。
チェリーちゃんが可愛かったです。
もう可愛さ満点でしたv
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