偉大なる魔法使い伝説偉大なる魔法使いとは その壱 他の魔法使いが手を出せないような魔物を倒している。 その弐 他の魔法使いが使えないような魔法を使える。 その参 魔王などを倒したパーティーの一員である。 などの偉業をやってのけた魔法使い 俺はそんな魔物を倒したことがない。(むしろ虫一匹殺せない性格である) 師匠の使えない魔法を使ったことがない。(ただでさえ魔法を覚えるのは大変なのだ) 魔王を倒した経験などない。(第一そんな強い奴にこころあたりなどない) そんな俺がなぜ「偉大なる魔法使い」と呼ばれているか。 それはひとえに目の前にいるこいつらの所為だろう。 「なんだよ、その反抗的な目は」 「駄目ですよ。そんなことを言っては。一応私達は居候なのですから」 目の前にいるのは天使の癖に目つきが悪く、タバコなんかをすぱすぱと吸っているシェイド。 そしてその隣は魔王の癖に気が弱く礼儀の正しい、第478代目魔王、ケルベル。 俺はそんなそいつらを見て本当に俺の人生終わったよなと遠い目をした。 なぜか俺の家に天使と魔王が居候しているということは、居候することになった翌日にはもう知れ渡っていていつの間にか偉大なる魔法使い祭り上げられていた。 実際のところ俺は中の上くらいの腕前だ。 親友のルダは 「いいじゃねーか。それで有名になれたと思えば」 とかほざきやがったが俺が、 「じゃあ、ルダがやれ。ちゃんと明日にでも有名になってるよ。勇者としてね!!」 といったら笑顔で逃げてった。 ったく、人の苦労も知らないで!……知ってたから逃げたのか。 そう、確かに有名にはなった。 しかしそれは所詮かりそめにしか過ぎない。 それが選ばれたとかいうのなら多少はあきらめがつく。しかし現実にはただ単に、偶然が重なっただけなのだ。(まあ偶然とは言いがたいかもしれないが) それでも、有名になれたことを喜ばしく思い、こいつらを世話するほど俺はいい人ではない。(それでも世話してんのは…たぶん成り行き上のせいだろう) いきなり現れて、「ここに住ませてもらうぜ」とか言われても(そんな無礼者はシェイドだったがそれを黙ってみていたケルベルも同罪だ!!)追い出すことも出来なかった自分が恨めしい。 なんだか、呆けているまに全ては決まってしまった。 そして、俺はなぜかこの二人が追い出せない。 そうとう危害をくらっているはずなのに……。 そうたとえば…… 「魔王様!お迎えに上がりました!!」 「おのれ!人間め!!自分達の身分もわきまえず、魔王様を誘拐するとは!!ゆるさん!!」 「それに天使までいるではないか!!さては人のいい魔王様を陥れるために天使と手を組みおったな!!」 「おい……」 少なくとも俺は魔王の奴を誘拐した覚えはない。(確かケルベルはシェイドと一緒に来たはずだ) それに俺は魔族より人間のほうが身分が低いってことに驚きだぞ!! ってやっぱり負け惜しみなのだろうか。(確かに一般人と一般魔族では一般魔族のほうがはるかにつよいもんな、例外はいるとして) 「まあ、立ち話もなんですから、とりあえず中へどうぞ」 俺は中へと招きこむ。 こういうときは相手を刺激しないことが一番なのを俺は経験上しっていた。 下手に波風を立てるとただでさえ魔族には叶わないかもしれないのに、さらに怒りに触れるかも知れない。 それにこういうものはやっぱり当人同士が片付けるのが道理なのだ。 そして今まで玄関上に立っていた魔族たちを部屋へ通し、お茶を出す。 心の中で (ああ、きっとこんなふうに魔族にお茶を出すのってきっと人間史上初なんだろうな…) などと情けないことを考えながら。 そしてケルベルを呼び出すと(そのとき呼びつけにしようとすると魔族たちの目が鋭く光ったので「魔王様」と呼んだののは一生の笑い話だ)さっさとその部屋を出ようとした。どうぞごゆっくりなどいいながら。 そうするとがしっと腕を捕まえられた。 その手に見覚えがあり、嫌な予感とともに後ろを向くとそこには笑顔だけれど目の笑っていない状態のシェイドが。 「どうしてこういう楽しそうなイベントに俺を呼ばないんだ?って言うかお前も参加しろ。楽しいことを分けてやるんだ、感謝しろよ」 などと変な理屈とも言えないことをいって部屋の中に逆戻り。 シェイドの顔を見たとき魔族の顔が険しくなる。 その横で呑気に笑ってお茶を飲んでいる原因さん。 きっとこれから修羅場になるんだろうな…と冷静に分析できるのは慣れてしまったからだろう。 シェイドはそんな視線を気にせずに当たり前のようにケルベルの隣に座る。 それを平然と見ている僕とは反対に慌てだす魔族たち。 そして囁き声が聞こえる。 『おい、これはどういうことだ?』 『知るか!!』 『わが主に限って天使と和解するとは…』 『いや、それは分からないぞ。何せ魔王様は魔界きってのいい人だからな』 俺はそれを聞きながら呆れたようなため息をつきそうになった。 (そんなにいい人なら魔王をやめさせちまえ!!そうすりゃ俺の苦労は半減するんじゃ!だいたいケルベルが魔王だっていうところが変なんだよ!!) というか性格上からいえば絶対魔王に向いているのはケルベルではなくシェイドのほうである。 が、しかし俺はシェイドの魔王ではないからこそこの世が平和なのだと思っている。 こいつが魔王だったらこんな世界一瞬で終わらせるか暇つぶしで征服するかのどちらかだろう。 どっちにしても俺らの命はこいつの手の中にあることになる…マジでケルベルみたいなお人よしが魔王でよかった!! 「で、何の話でしたか?」 ケルベルがまるで今日の天気はどうでしたかというような口調で穏やかに話す。 聞きようによればことの重大さが分かっていないような口ぶり。(いや、実際俺もわかってはいないが) それを聞いた魔物たちが顔を青くして話し出す。 「だから魔界にお帰りくださいといっているのです!!」 「このようなところにいてはあなた様のためにはなりません!!」 「もしこの人間と天使に弱みを握られているのならご安心を!!一瞬に消し去りますから!!」 おいおいおいおい!!! もしかしたらもしかしなくてもこいつら俺たちを殺す算段してねーか? こんなかでまともに戦ったとして…一番死にそうなの俺じゃねーか!! 何とかこの会話の実行を回避しようと愛想100%の笑顔で 「あ、お茶もういっぱいどうですか?」 「うむ、もらおう」 などとやっていた。 しかしそんなことは無駄だったのだ。 火に油を注ぐ存在と煽っているとしか思えない存在がそばにいるのだから。 「言っとくがケルベルは魔界には帰らせねーからな」 アー、いっちゃったよこの人は。もといこの性悪天使が。 まあ、言うと思っていたけど…もうちょっと周りの事考えてほしい。 その言葉に魔族たちは一瞬固まり、そしてだんだん顔が激怒に染まっていく。 神様がいるなら頼みます!どうかこのうちの被害が最小限に収まりますように!!まだローンも残ってるし、貴重な薬草だってあるんです!!ああ、それと魔法解読書も!! 「なんだと!!なぜそんなことが許される!!おまえら天界の奴等には関係のないことだ!!」 「そうだ!!魔界のものはみな王の帰りを待ちわびているのだぞ!!」 「そう、でも俺らには関係のないことだ。俺は俺のやりたいようにやる」 「な、なんだと!!」 ああ、やっぱり神などいないのか…。 魔族たちのシェイドの間には激しく火花が散る。 俺はぼんやりとその光景を見つめるしか出来ない。 そしてとうとう激闘が始まる!!というときだった。 「魔界には帰りませんよ。だってシェイドのお嫁さんになっちゃいましたから」 「は…………?」 「いや、だから魔界には帰らないと」 「いえ、王よ。その後です」 「ああ、シェイドのお嫁さんになったということですか?」 「あなた、確か婚約者いましたよね…?」 「はい、ですが「駆け落ち」してきちゃいました」 「はあ、駆け落ちですか………っておい!!」 アハハハハ。もう俺は笑うしか道は残ってないのか…? そう、この二人、なんと駆け落ちしてきたのだ。 どうやら結婚式にはなぜか親父が取り計らったらしく、新居ということで俺のうちを採用しやがった。 当然ここの主人は俺のはずなのだが、お手伝いさん状態になっている。 そういう時誰もが思うのであろう。 どうか夢であってください!!と。 そのときほど俺は親父を恨んだことはなかった。 とまあ、過去の話はおいといて。 実際の問題は目の前に起こっている修羅場だろう。 確かにケルベルには婚約者がいた。というか家までケルベルを追ってきた。 それは男の俺から見てもかっこよかったと思う。(ちなみに隣のエリザさんがその婚約者が来た翌日俺に「あれ誰!!」と真剣な顔で聞いてきた) はっきり言ってシェイドと互角だろう。(一応シェイドもかっこいいほうに入る。ただ性格破綻者ということで全ては台無しだけど) で、ケルベルと並んで絵になるというのならシェイドよりその婚約者のほうがはまる。(ケルベルは長い黒髪美人に対してシェイドは金髪だからな) しかし、悲しきかな。ここまで恋人を追ってきた美男子は来て一時間後、その恋人の夫に星にされました。 この魔族らがそのことを知らないのならその婚約者、戻れないほどの重傷を負わされたんだろうな…。まあ、仮にも魔王の婚約者なんだから死にはしないだろうけど。 「し、しかし王。それではわれわれの威厳が…魔族としての威厳が保てませぬぞ!!」 「はい、ですから私は今日限り魔王を止めさせていただきます」 そうケルベルがにっこりというと魔族たちは再び「は…?」という顔になった。 俺はそのよこでケルベルにしては上出来な判断だと思っていた。 しかしこれでやめることが出来たら魔界は民主制になっているのだろう。 一番初めに正気に返った魔族が言葉を発しようとした。 「そんなに簡単にはいきませぬ!!それな泣くとも魔王様がいず、民は不満に満ち溢れてる!!それにくわえてやめるなど……!」 「うるせーよ!!」 ドゴ!! その魔族はシェイドに殴られ気絶した。白目まで向いてるのでこれは朝まで起きれないと判断。 いくらなんでもやりすぎだと思ったが、これがシェイドなのである。 これは朝までに変える場合はちゃんとつれて帰ってもらおう。 「さてと、これからは話し合いじゃあ解決できねー問題だからな。さあ、誰から来る?」 とやる気満々である。 俺は少し泣きたくなった。 その後は何も言うまい。ただ、魔族が相当弱かったことだけ告げておく。(あの婚約者が一番長持ちしたぞ) そして天界からも魔界からもこんな訪問者達が現れて、俺は平凡な魔法使いではなくなった。 人は俺を偉大なる魔法使いだというけれど、それはただ現実を知らないだけだ。 そして今日、俺が望むことは夜ゆっくり眠れますようにということである。 だから訪問者さんたち、夜襲と破壊は止めてください。 今日も俺のおてづだいさん生活は続く!! あとがき 緋櫻 花さんに捧げます、ファンタジーで魔法使いなどが主人公の魔物がうじゃうじゃ出てくる話のはずです。えっとファンタジーはクリアーしてます。一応魔法使いが出てるので。それと魔法使いが主人公なのでこれもOK。魔物は、魔王まで出ているのでぎりぎりオッケー、でもなぜかリクと遠くはなれているのはなぜ?えっと馬鹿じゃねーと笑っていただければ幸いです。しかしギャグは楽ですなーと思いながら・・・強制終了! |