two mind〜replay

「ふう、ここがあのアルデルの街ね」
『おまえ、少しはおとなしく出来ないのか?』
「まあまあ・・・」
カルスたち一行たこのたび、故郷の村をでて旅立つことになった。
カルスとカレス。
二人は双子だった。
それも特別な。
ひとつの体を共有する双子。
でも生まれてきてからそうだったので不自由はない。
旅の目的もそれと関係するものではなく、ただ憧れたからという単純な動機。
幼馴染のカナルと一緒に旅をしている。
それが幸せだな〜と思うこのごろをカルスたちは過ごしていた。

『どうするかな〜今夜の宿・・・』
カレスがそう呟くとカナルは張り切った様子で、
「私さーあそこの宿屋、入ってみたかったんだよね」
と近くにある宿を指差した。
小さいが、花とかが飾ってあってかわいい宿屋である。
女の子に人気の出そうな感じだ。
カルスはまあ、こういう宿でも抵抗はなかった、だがカレスは・・・。

『ばっかじゃねーの?だいたいこんなところに泊まれっかっつーの』

「か、カレス・・。」
宿屋の主人とそこをひいきにしているお客さんがいっせいに怒り出すようなセリフだ。
カナルも怒ったようでカレス(カルス)を睨みながら、
「それならほかにいけばいいじゃない!」
と喧嘩腰。
喧嘩売られて買わないのは男じゃないと父に仕込まれたカレスは
『ああ、いくよ!!!』
と返し、さっさとその宿の見えないところへ去ってしまった。

「ねえ、いいの?それで?」
カルスは心配そうにカレスに聞く。
何も知らない人から見れば独り言状態で危ない人みたいだ。
現にそんなカルスとカレスを変な目で見ている通行人達。
それを気にせず歩き続けるカルスとカレス。
『おまえ・・・あんなところ泊まれるのか?』
「うん・・・別に大丈夫だと思うけど?だいたいカナルの少女趣味って今から始まったことじゃないでしょ?」
そう、性格にあわずカナルは少女趣味をしていた。
「だいたい、今から好き嫌い言ってたら先が思いやられるよ」
カレルはその言葉に違和感を感じた。
確かにカナルと旅をしているのだからその言葉は納得できる。
しかしカルスの言い方ではなんとなく、他に意味があるように思えた。
(おい、それどういう意味だ)
なぜかいやな予感がした。

「まったく、好きあっている同士なのにどうしてどっちも素直にならないんだろう・・・」

『はあ〜!!!???』
カレスは思いっきり自分の相棒のことを疑った。
もしかして相棒の脳にはもう蛆虫がわいているんじゃないかと。(まあ、カレスと同じ能なのだからそれはないと思うが)
(おいおい、相当鈍いとは思っていたが、ここまで来るか?普通・・・。だめだ、なんかカナルに同情の念さえわいてきたぞ、俺は・・・)
カレスはなんだかいままで邪魔ばかりしてきた自分が馬鹿みたいに思えた。
(なんだか俺、すっごくこいつの将来に不安を感じてきた・・・。こいつ、絶対誰かに恋愛感情いだいてもそれに気づかないタイプだし・・・)
自分のことを棚に上げて、相棒の恋愛に不安をいだくカレスであった。


「いったい何よ・・・」
『いいから!』
あのあとカレスは急いでカルスを眠らせ(強制的に)カナルのところに戻った。
そしていまは路地の裏。
カルスが聞いていないのだからそんなところに入らなくてもよさそうだが、まあ雰囲気ということで。
カナルはカレスのいつになくまじめな顔に何かあったのか不安を感じた。
そして静かにカレスが口を開く。

『俺たち・・・カルスの中で恋人同士になってやがる』

「・・・は?」 カナルは一瞬時が止まったような気がした。
そして・・・。

「ええ〜!!!!!?????」
それこそ世界の終わりと宣言されたような悲鳴を上げた。
いや、カなるにはそれに匹敵するような事なのだろう。
なんたって彼女は一度好きだと告白していたのだから。

〜回想〜

「あのね、カルス!!私・・・あなたのこと好きだよ」
「僕も好きだよ、だから一緒に旅しているんじゃない。嫌いなやつと旅なんかしないよ」
「・・・そ、そう・・・」

〜回想終了〜

カルスが言う好きは友達に言う好きと同じ程度のものだと知っていた。
だからカナルはまだかるすが恋愛感情というものを持ってないんだと思っていた。
恋愛感情を持っていたら少なくともカナルのいった意味くらいわかるだろうと!
しかし、それはカナルとカレスが恋人同士だという誤解からそう思われてたなんて・・・!!
「何で私がカレスなんかと恋人同士にならなくちゃならないのよ!!!」

『おい・・・それ俺にかなり失礼だぞ・・・』

「え・・・。」 我に返るとそこには複雑そうな顔をしたカレスが。
どうやらカナルは思っていたことをい声に出していたらしい。
カレスは呆れたような顔でカナルをみていた。
『おまえって本当に苦労しているよな』
「・・・そう思うなら邪魔するの止めてくれない?」
『それは駄目だ。そうなると俺もおまえに気を使わなくちゃならなくなるからな。それに最悪の場合、結婚しなくちゃいけない。それだけは避けたいからな。』
「へ〜、そんなこと言って私にカルスをとられたくないだけじゃないの?いい加減にしてよ、このブラコン!」
『・・・あたりまえだろ。一応あいつには幸せになってもらわないとな。あいつの人生は俺の人生だからな。だいたいあいつの好きな相手を結婚相手にするとしても俺にも好みというやつがあるからな。俺の気に入るやつにしか結婚はさせない!!』
「何よ!!その言い方!!まるで私が標準に劣ってるように聞こえるじゃない!!大体そんな事言ってたら結婚なんてずっと無理よ!」
『なんだよ、自覚なかったのか?かわいそうな奴だな!』
「何よ!私は一応あの村では何人かに付き合ってくれって言われたんだからね!!」
『それはあいつらの目が節穴なだけだろ!それかましなやつが独りもいなかったかだな!』
「なんですって!!!」

そしてカルスがおきるまでそんな言い争いが続いた。

その後に不機嫌そうに言われたカルスの
「まったく、また喧嘩したの?喧嘩するほど仲がいいっていうけどほどほどにしてよ。それとカレス、わざわざ僕を眠らせないでも二人っきりになりたいときは僕はちゃんといなくなるから前もって言ってよ。僕だってカップルの話を覗き見するほど野暮じゃないんだから」
と言う勘違い発言に言葉を失うカレスとカナルだった。
おそらくこいつはどんなにちがうと言っても照れてるとしか思わないだろう。
そういう奴だ。

カルスがその勘違いに気づくまで何年かかることやら。



あとがき
これをささめゆきさんに捧げます「two mind」の続編です。いかがでしたでしょうか?なんかもうカレスとカナルの漫才になってますね。相変わらずカルスは鈍感ですし。(なんかそれに拍車がかかってます)一応前回作を読まなくても分かるようにしたのですが・・・どうですか?

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