setting sun


この想いが届かないことは知っていたの。
だけど私はあなたと一緒にいられて幸せだった・・・。

「こんにちは」
あなたはそう声をかけてきた。
私はびっくりしたわ。
だって私が見えるなんて人、誰もいなかったから。
そのときあなたはまだ幼くて、とても綺麗な瞳が印象的だった。
「キミは何?」
あなたがそう聞くから私は
「さあ、なんでしょう?」
なんておどけて見せた。
そしたらあなたはびっくりしていたわね。
もしかしたら犬とか猫とかと一緒にしていたのかもしれない。
だけどすぐに笑顔になった。
よく見ればその服装はここら辺には見ない立派なもので、きっと貴族の子なんだとすぐに分かった。
だけどそんなものより私はあなたの瞳がきになって。
その瞳は誰よりも澄んでいるような気がして。
私は気がついたらあなたにいっていたわ。
「わたしをつれていって。」
って。
そして私はあなたの元へ。
今までいたこの太陽が生まれる街を捨て。
私はここの街の薔薇の精。
愛を意味する花の精。

あなたは驚いていた。
私の花がいつまでも枯れないから。
だけどいつの間にかあなたにとってそれ当たり前になっていた。
私はその間も結構無理していたけれど。
あなたのそばにいたかったから。
ずっとそばにいたかったから。
だから私は枯れなかった。
あなたに愛でていてほしかったから。

あなたはいつの間にか成長していた。
背も高くなり、前にはなかった落ち着きがでてきた。
だけどその瞳は輝いたまま、光を無くしていない。
それが私にはうれしくて、今日も綺麗な花を咲かす動力源となる。
だけどこのごろあなたの顔は曇ってばかりで、私は少し不安になる。 私にはどうしたのとも聞けない。
だってあなたに私の声はもう届かないから。
だってあなたにはもう私の姿が見えないはずだから。
もう他の誰かを愛していたから。
だけど私はあなたのそばにいるだけで十分幸せ。
あなたの瞳に見つめられるだけで。

だけどあなたはいまはいない。
だってあなたは死んでしまったのだから。
愛する人を残して。
あなたを見つめていた私を残して。
あなたが亡くなったときあなたの愛する人は泣いたわ。
私にもその悲しみが伝わるくらいに。
その人のその後は知らない。
だって私はあなたが死んだとき枯れたから。
花ではなく、私自身が。
あなたの瞳に見つめられないまま、生きていくのは無意味だったから。
太陽が沈むそのときに。
太陽の生まれる街に生まれ、太陽が沈むときに死んでいく。
一番最後に見た夕日はとても綺麗で。
なぜかとても悲しかった。
もう私の薔薇はない。
あるのはたった一つの願いだけ。
愛してほしいとは願わない。
だって私は愛を祝福する薔薇の精だから。
だから私はあなたが誰を愛したか知っている。
気づいてほしいとも思わない。
だってそのままのあなたが好きだから。
私の願いはただひとつ。

「私を連れてって。」

あとがき
1212HIT記念!!稜静さんに捧げます、「夕日と妖精」
なんとも短い話になってしまいました。
それも夕日ってあまり重要じゃないし!!
申し訳ありませんでした。
こんなのでよかったらお持ち帰りください。

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