俺は異常なのかもしれない。 そう思わざる終えない今日この頃。 答えようのない質問が続く。 どうしても答えられない。正直に答えてしまえばきっと俺は刑務所入りだ。 「ねえ、制服にあう?」 「ああ、綺麗綺麗」 「ちゃんと見てないでしょ! 圭ちゃんったら!」 隣家の愛娘、雅美がターンするのを横目で見て、褒めたらむっとされた。 まあ、仕方ない。だって旗から見たら俺の目線は雑誌に向かっていたんだから。 でもそれでもこの体の主である俺にはわかる。 俺の目はがんばって雅美を捉えていたことを。 というか勝手に捕らえていた。俺の命令を無視して。 ああ、いやなんだよな。こういうなんていうかべたな話。 なんとなく制服って女の子かわいく見せてるじゃん? 新しい制服だと新鮮味とか沸いてくるし。 そういう趣味ないつもりだけれど、それでも若々しさがプラスされるせいか……、いや、やめとこ。 これ以上考えたら墓穴を掘りそう。 ただでさえやばいのに。 「ねー、見てよー。ほらぴっちぴちだよ? 圭ちゃんの年で新女子中学生を拝めるなんてまれだよ?」 「おい、俺の高校がどこにあるか知ってて言ってるのか?」 「ううん、知らない」 知らないわけないだろ、ボケ。 思わずそういってしまいたくなるところを抑える。 ほら、やっぱり小さい子苛めたらやばいだろ。まあ、こいつは年の割には育っているけど俺から見れば断然ちびだし。 うん、正しい高校生の判断だ。母さんからも女の子には優しくしなさいとか言われてるし。 「俺ははっきり言って見飽きてんの。通学路にお前の通う学校あるし、高校の近くにも中学くらいあるし。あー、中学よりも女子高作ってほしいよな?」 「……そんなんしらないもん」 あ、拗ねた。 女ってよく拗ねる生き物だと思う。少なくとも男よりはその拗ね方が様になっていると思う。 かわいいって自覚しているやつにとってはもはや武器に近いんじゃないだろうか。 馬鹿な男たちはそんな彼女たちの目論見に右往左往するのだ。俺も含めて。 でも多分目の前の女はそんな武器を使うには幼すぎて。 「どうせ圭ちゃんなんてもてないよ」 「ばーか、お前俺の練習試合来てたときの黄色い歓声聞いてなかったのか?」 「……圭ちゃんのスケベ!」 「スケベで悪かったな、がき」 子供っぽい会話。 こいつの前だと子供に戻る気がするのはこいつに合わせるからか。 少なくともクラスの女に告白される俺とは違う。 もっとかっこいいと告ってきた女も歓声上げているやつらも思っているはずだ。 調子が狂うのか、仮面がはがれるのか。この二つの違いは結構大きなものだと思う。 それに俺はたぶん苦悩しているのだ。 調子が狂うのはいい。ほかにもそう思うようなやつだっているのだから。 でも仮面がはがれるっていうのは……なんていうか、こいつに俺すら知らない自分を見せているようで。 こいつといると自分をさらけ出しているようで。 つまり……そういうことかもしれないと思っているのである。 たとえばこいつに彼氏ができたとしよう。 それがどうしようもないやつだったら反対するだろうが、もしすっごいいいやつだった場合だ。 俺は笑って祝福できるかどうか分からない。 寂しさを感じることは当たり前だと思う。まあ、誰だって懐かれた妹のような奴に男ができたときそういう気持ちになるだろ? でもそれが「兄貴」としての範疇を超えているかどうかが謎だ。 たかが空想だけど、それでもそうやってシュミレーションしておかないとなんか怖いことがおきそうだ。 ああ、大体そう思うことすら兄貴でない気もしないでもない。 「俺ってこんな奴だったっけ?」 思わず口に出してしまう不満。 そう、やっぱり変だと思うのだ。こうしている状況。 3歳差。これは結構俺たちの年代から見れば大きかったりする。 まあ、もちろん年上だったらまだいけるかもしれないが、年下だったら……犯罪だよな。 正直この間まで小学生に手を出してはいけないと思う。 だからといってこの年で恋愛ごとといったらそういうこと考えるだろ? まあ、あっちまでは行かないとしてもキスくらいはするだろ、普通は。 だけど、なんとなく自分の倫理観っていうのが警報を鳴らしている気がする。 はっきりいってまだ早いと思うんだ、雅美には。 こっちだってよこしまな目で見続けてきたわけじゃいんだ。このままでいてほしいと思うことだってある。 そう、そうなのだ。問題は。 俺は現状維持で満足してしまっているから問題なんだ。 ライバルがいないからか、これが恋愛感情じゃないからか分からないからすっきりしないんだ。 この間まで小学生とか、そういうのは建前で結局自分のことが分からないからあっちいったりこっちいったり混乱しているんだと思う。 そういうことがしたいわけじゃないけど、誰かが雅美の隣に並んだら結構いやだと思う。 そんな曖昧な関係なのだ。 だから 「分かるのはとりあえずお前が大人になってからだよな」 「は? 何言ってんの、圭ちゃん?」 雅美は本当になんだか分からないというように首をひねる。 少なくともこいつは今の俺ぐらいにならないと度胸はつけられないと思う。 そのころになったら俺だって今の感情に名前をつけられるはずだから。 だから今は 「お前の兄貴でいようかなって話だよ」 「は? なに? 余計話しつながらないんだけど」 分かるように説明しろとせがむ雅美を背中にしがみつかれながら、明確な説明はしない。 ただいまはお前のためなら何だってしてやるさといえるくらいのシスコン兄貴のようになってやろうと思った。 |